銭湯養生訓/神藤啓司

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家のお風呂にだけ入ってる人が危ない!

あなたはぬるいお風呂で健康アップしましたか?美しく変身できましたか?

刺激的ないい方かもしれませんが、「家のお風呂にしか入らない人が危ない」と私は本気で思っています。健康になる食事法や運動法の情報は豊富にあり、意識の高い方ならなんらかの健康にいいことを実践されていることと思います。

入浴も健康になる生活の重要な一翼を占めています。しかし、こと入浴健康法となると、ほとんどの人が「ぬるめの湯の半身浴」が一番いいと信じているのが現実ではないでしょうか。

私は、ここに強い疑問を以前から持ち続けてきました。お医者さんがそういっているのだから、疑問の余地はないだろう、と厳しい反論を受けるかもしれません。確かにテレビなどに出てくる医師のほとんど、あるいは医師が書いた入浴健康法の本のほとんどは、°Cくらいのぬるめの半身浴をすすめています。ぬる湯の半身浴が一番体に負担がからない最良の入浴法、リスクがないからいい、というのがその根拠です。

医師は強い体づくりのプロではない

確かにリスクがない、少ないということは大切です。医師が行う医療行為は、原則として診断に基づいて医師の責任と管理のもと、外科的方法や薬物投与などによって治療目的を達成することです。ですから、自身の責任や管理から離れたところで個人的に行われるいろいろな「健康法」について、リスキーな発言はできない、というやむを得ない立場があるのだと思います。

お医者さんは処方箋を書いて薬を指示し、その服用量や回数などを細かく指導することになっています。なぜでしょう。お医者さんが出してくれる薬は大変よく効くものが多い。大変よく効くということは、反面、何かを犠牲にしていることなのです。ですから、指示を守らないと副作用が現れたり、もっと重大な危険性すらはらんでいたりします。薬はあくまでも薬であると同時に毒でもある、これは今や常識です。

医師は、病気を治すプロですが、強い体づくりのプロではありません。私達は日頃からあまりにも医師に頼り過ぎていて、自分の感性を大切にしていないのです。

もちろん、心臓や脳の血管や血圧などに問題があり、医師の治療を受けている人にとって、体に負担がかからない入浴法は大切なことです。当然、医師のそうした指示に従わなくてはなりません。しかし、血液循環に問題のない健常者は、むしろ入浴タイムをフィットネスとしてとらえ、積極的に熱いお風呂に入って代謝を高め、免疫力や体温をアップさせてほしい、私の経験からそう 思うのです。普段私達(健常者)は、ウォーキングやジョギング、ヨガやストレッチで運動不足 を解消する工夫をしています。体を鍛えるためにそうした手段を積極的にとらえます。体に負担 がかかるからという理由で運動をやめる人などいません。

体を鍛える入浴とリラックスする入浴の違い

お風呂で体を鍛えようという意識を持つと、他の運動ととてもよい相乗効果を生み出すことを、私は自分の体で知りました。ポイントは「深い浴槽」と「熱いお湯」という条件下で入浴することなのです。

なぜ、ぬるい湯ではいけないのでしょうか。ぬるい湯は副交感神経を優位にさせるためリラックス効果は確かにあります。だから、癒しのためや疲れを取るための入浴には、ぬる湯の半身浴が適しているのは事実です。

しかし、ぬるめの湯の半身浴では体温を上げることができません。免疫力も高めません。つまり、この入浴では「強い体づくり」は実現しないのです。もちろん肥満解消にも役立ちません。汗をかいてスッキリするだけで、脂肪は燃えないからです。

ワンランク上の美容効果、健康効果、ダイエット効果を求めるのであれば、半身浴ではダメ。 これらの目的を実現するキーポイントは「体温を高めること」なのです。そのための効率的な入 浴法が大切だということです。

家のお風呂じゃなぜだめなの?

「家のお風呂にだけ入ってる人が危ない」、冒頭にそう書きました。「家庭の風呂で温度を高くして入っても同じではないですか?」と思うかもしれませんが、不思議なことに家の狭いお風呂では、温度だけ高くしても広さと深さが足りないために効果は半減するのです。

手足を伸ばせない、湯の中で動けない、無理な体勢にしないと肩まで浸かれない家のバスタブには限界があります。それほど「広い深い・熱い」ことが重要なのです。自宅の狭いお風呂と銭湯の広い深風呂に入り比べてください。家のお風呂では、温まったつもりでも湯上がりに汗が引くと体も冷たくなっていきます。しかし銭湯の深風呂に入った後は湯上がり後、いつまでも手足がポカポカと暖かいのです。

その理由は、銭湯の深風呂の大量の熱いお湯があなたの全身を広く包み込み、くまなく体の隅々まで均等に温めてくれるから。家庭の風呂とは違い、銭湯では湯の温度を一定に保つよう常に沸かし続けてくれているという理由もあります。

これらが、私が提唱する入浴法を効率よく実践する場として、銭湯を推奨したい理由です。

体を温め平時の体温を高めることの大切さ、それを実現する場としての銭湯の活用法、これが本書のテーマです。銭湯だからこそ実現できる新しいトレーニング入浴法によって、予防医療にもつながる生活スタイルを提案したいと思っています。広く深く熱い銭湯での入浴習慣を普及させることは、あらゆる世代の健康増進に役立つと確信しています。さらに、女性にとっては美容効果というメリットまで得られます。

成績のいいアスリートは熱いお風呂で鍛えている

私自身、年アスリート(野球)をしてきた過程で、熱い深いお風呂が強い体をつくり上げてくれたという体験からいろいろなことを学びました。そして現在は仕事上、日本を代表するトップアスリートたちといろいろ話をする機会がありますが、成績のいい選手ほどしっかり熱いお風呂に入っていることが分かりました。

ぬる湯の半身浴で活躍している選手など、聞いたことがありません。

また、毎日のように銭湯に通う代代のお年寄りにもよく出会いますが、皆さん肌がツヤツヤしていて、いつまでも大変元気です。体に負担がかかるといって、若い女性が避けている熱い湯船に当たり前のように入っているのです。その結果(だと思いますが)すごく元気なのでしょう。

熱い銭湯のお風呂は、精神力さえも強くしてくれるのだと私は確信しています。年齢も始めるタイミングも関係ありません。本書をきっかけにして、多くの健康な人がぬる湯半身浴の呪縛から早く解き放たれてほしいのです。

本書によって、家のお風呂と銭湯はどこが異なるのか?なぜ、温泉と銭湯はほとんど変わらないのか?体温を上げることが日本人にとってどれだけ大切なことなのか?銭湯を活用しないとなぜ損するのか?といった知識をしっかり身に付けていただければと思います。

銭湯が新しい役割を担って復活する気配を感じる

ところで、私がなぜそれほどまでに銭湯にこだわるのか、疑問に思う読者もいらっしゃるかもしれません。それは今、銭湯が新しい役割を持ちはじめたということなのです。東京を例にしますと、江戸の昔から昭和年代くらいまでは、銭湯は家にお風呂がない人々のために重要な役割を持っていました。地域の衛生状態を保つ施設として。しかし家庭風呂の普及に伴い、銭湯の数は減少してきました。だから銭湯の役割はなくなった、と指摘する人もいるかもしれません。しかし家庭のお風呂の普及率が限りなく100パーセントに近づいている今でも、都内に銭湯は700軒以上(平成年月時点で全国に約3200軒)あるのです。

この700余軒の銭湯は、家にお風呂のある人が「ワンランク上の健康と美容を手に入れる役割を持っているのではないか、冷えた体を芯まで温めることが生命維持のために有効である、という先人の知恵が今の銭湯の新しい役割を気付かせはじめたのではないか、仮説ですが私はそう思うのです。

数はまだ少ないのですが、私と同じようなことを感じとって銭湯を利用している人が確実に増えはじめている気配を感じます。広くて深くて熱い湯船が、身近な街のSPAとして誰にでも活用される可能性を銭湯は持ちはじめている、そう感じるのです。

日本人の多くは今、低体温化が止まらないといわれています。この問題を回復するためにも、まずは体を温めることによって体温を上げていくという意識を強く持つことが大切です。東京大学の調査によると、50年前の日本人の平均体温は39.6度。別に大勢の人がカゼを引いていたわけではありません。人間本来の平熱は約37度前後だということです。

それにも関わらず、現代人は平熱が35度台の人が恐ろしいほどたくさんいます。°C台の人すらいるようです。低体温と呼ばれるこの状態は、あらゆる病気の大元の原因として、お医者さんが警鐘を鳴らしている通りです。ですから、体温の低い人は体温の上がりにくいぬる湯の半身浴などしている場合ではないのです。

温泉地に住んで毎日源泉かけ流しの熱い湯に入れる人は、入浴に関して最高の環境を手にしているといえるでしょう。しかしそのような恵まれた人は、日本中にごくわずかいるだけ。その温 泉の役割を都会で果たしているのが、実は銭湯なのです。だから私は、銭湯がこれ以上減ること を望みません。銭湯にこだわり続けるゆえんです。

まずエアコンの生活から脱しよう

今、エアコンのある生活が当たり前となっています。エアコンなしでは生きていけない人を増やす危ない社会状況が進んでいます。真夏はエアコンをかけて寝るのが当たり前、と多くの人が思っています。とても怖い状態だと、私は思います。

同様に真冬の就寝時、布団に入ってもすぐに手足が温かくならない人が多いのも事実。だから暖房で温める、それを当たり前だと思わないでほしいのです。四季がある日本独特の環境の中でも、昔のようにエアコンなしで普通に生活できる強さの体づくりが必要です。それが日本という環境で生きていく「生活適応」というものです。ぬる湯の半身浴では何時間入っていても体温が変わりませんから、湯船の中では楽でしょう。その代わり、冷え性の人はなにも改善されません。代謝、免疫力、まして低体温が改善されるわけがないからです。

シャワーだけの入浴も同じ。欧米から入ってきたおしゃれで華やかで一見合理的な文化や習慣は(全て悪いとはいいませんが)、伝統的な日本文化の対極にあり、シャワー入浴は体温を上げるという観点からは役に立たないことを理解していただきたいのです。

お湯に浸かる習慣のない欧米人が、浅いバスタブとシャワーの浴室を発想したのは当然です。彼らは肉食で脂肪の量が多い肉体を持っていますから、比較的高体温をキープすることができ、だからこそ日常生活の中に冷やす手法を取り入れようとするのです。

冷たい食事や露出の多いファッションも、エアコンやシャワー入浴やぬる湯半身浴と同列にあります。筋肉量が少なく、穀物や野菜を中心とした素晴らしくバランスのいい食事をする日本人は、その結果体温を上げにくい肉体のため、太古の昔からつい年前まで、体を温める伝統的な生活を続けていました。

繰り返しになりますが、極度の疲労から深いリラクゼーションを得たい時、ぬる湯の半身浴はとても効果的です。ですから、熱くて深い湯船に入る「銭湯フィットネス」と上手にバランスのとれた入浴生活をしていただきたいのです。私は「強い体づくり」をスローガンに、週回の銭湯ライフを提案します。残りの日間は今まで通りの半身浴で結構。銭湯の広いお風呂は理屈抜きで気持ちいいものです。今はWEBですぐに銭湯の場所を調べることができます。身近に銭湯のないところに住んでいる人も、ぶらりと街歩きをする感覚で電車に乗って見知らぬ町の銭湯を訪ねてみてはいかがでしょうか。あなたに合った銭湯がきっと見つかるはずです。