風呂屋のオヤジの番台ブログ

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2007年08月25日

ホラホラ…ホラ?

 30年来の常連男性であるSさんが亡くなった。

 88才である。

 開店早々の脱衣場では、いつもSさんと一緒に入っていた湯友とでもいう96才と87才のお二人がSさんの訃報に淋しそうに話している。Sさんとは、お達者トリオとでもいうべき3人だったが、その仲間が欠けたのである。お互い高齢なだけに切ないであろう。

 Sさんは明るくて元気な人だった。浴場広報誌「1010」に「銭湯には不老長寿の人もいる」として書かせてもらったことがあった。会社を定年になってから自転車を始め、南は大阪から北は青森まで自転車で走り回り、自転車が趣味の人だった。80才という傘寿の坂を越しても巣鴨のお地蔵さんなどへ気軽にペダルを漕いでいくということでアタシらを驚かせていたんだ。

 そんな不老長寿と思わせたお人が、昨年、大病を患い入院手術をされてよりめっきり弱られた。一回り細くなり、杖をついて、それでもお風呂へきていたんだが、そのうち饒舌だった口調もめっきり少なくなり暗くなってきた。やがて再入院をされ不帰の人となってしまったのである。

 さて、Sさんの訃報を聞いての脱衣場である。

 「Sさんのお葬式は火葬場が混んでいて一週間以上も先になるんだって」

 と教えてくれたのはSさんの隣近所に住んでいる83才のおばちゃん。この方もやはり30年来の常連さんである。Sさん同様明るくて話好きなおばちゃんだが、近年少々ボケが、イヤいや弱られた感じである。しかしこのおばちゃんは生来の明るさからトンチンカンの会話をしても明るくて嫌味がない。

 前にこんなことがあった。いつも布製の大型な袋に風呂道具と一緒に入浴券を入れてくるんだが、よく入浴券の入ってる場所がわからずにゴチャゴチャと袋の中をかきまわすんで、アタシが袋についているポケットに入れておくよう指示?したんである。それからはすんなり入浴券を出すようになったんだが、この時はもう入浴券をアタシに渡したと思っちゃったのか、アタシが催促すると

 「今、渡したじゃない、大丈夫?よ〜く考えてみて」

 とのたまわれた。アタシャ、大丈夫かと言われてヘンな気分になっちゃったね。

 さて、またSさんのことに戻ろう。おばちゃんが続ける。

 「Sさんのお葬式は一週間も先になるから、その前に知り合いの人が集まってお線香をあげるんだって。あたしも行かなくっちゃね」

 「ホウ、高齢化時代で葬儀屋さんも火葬場が混んでいるんですなあ。それで、知り合いが集まって供養をするっていうのはどこでやるのかな?」

 「○○さんちのそばの……ホラホラ……」

 「ホラホラって、どっかのお寺でやるの?」

 「そっ、××通りを言ったところにあるお寺?、ホラ……」

 「ホラホラばっかりじゃわかりませんよ」

 「あたしも思い出せないわ」

 ということで脱衣場へ入られたのだが、程無くまたアタシんところへ戻ってきた。まだお風呂前である。

 「Sさんのお寺、わかったわ。Y寺よ、Y寺」

 「そうですかぁ。誰か知っている人が脱衣場にいたのかな?」

 「そッ、ホラホラそこにいる人よ」

 「そこにって、誰なの?」

 「ホラホラ、お風呂に入りにきた人よ」

 ヤだねえおばちゃん。うちのお客さんはみ〜んな風呂へ入りに来た人ばっかりですがな−−。

2007年08月23日

爽やかじゃなくっちゃ

 もう夜10時半頃かな。

 女湯の脱衣場から

 「佐賀北が勝って感激したわあ。8回の大逆転、すごかったわねえ……」

 テレビの熱闘甲子園を見ているおばちゃん方の話し声が聞こえてきた。最近はプロ野球の話が少なくなり男湯からも当然、高校野球の話が流れてくる。プロ野球のファンは、特に圧倒的なG党の多い脱衣場は、勝ったり負けたりを繰リ返している昨今の大ジャイアンツに物足りなさを感じているようである。

 その分、高校野球への期待感が増しているようだ。それにしても女湯から活発な観戦談義?が聞こえてくるとは珍しいよ。昨日のことである。

 そして今日。新聞には「広陵 悲運の夏」の見出しで第89回・全国高校野球選手権の結果が報じられている。5−4で佐賀北が広陵を破って初優勝を遂げた。試合は7回まで広陵がリードで、このまま行くかと思わせたらしいが、8回の裏、佐賀北から満塁本塁打が飛び出し大逆転である。

 「佐賀北が勝ってよかったなあ。俺は別に佐賀の出身じゃないけど、何となく佐賀に勝たせたかったんだ」

 脱衣場の雰囲気も古豪・広陵より新鋭・佐賀の応援が多かったようだなあ。判官ビイキってやつか−−。
 さて、こっからは風呂屋のオヤジの独論?となるんだ。何をエラソーにと言われそうだが、まあいつものことだと御容赦ください。
 アタシね、佐賀北が公立高校であり、部員全員が普通科の生徒である……というところにまず爽やかだなあ、と思っちゃうんだ。そしてね監督が国語の先生だと言う点にも魅力を感じちゃうんだね。

 対して広陵の中井監督が試合後、8回の逆転劇の導火線になった2四球について

 「…ストライクが何球もあった。審判は技量を高めるべき。あれでは真ん中しか投げられない」

 などと審判批判を言ったらしい。アタシャこれには唖然としたなあ。まあ勝ってナンボの職業監督なんだろうが、ヤだねえ。

 今回たまたま野球部員の特待生問題が表面化じたけど、昔から野球高校みたいな学校が多く、校名を上げるには甲子園が一番?と職業監督を抱え、学業より野球優先のような気風にどうも抵抗感があったんだ。そこで、そんなことに関連した古い話を思い出したよ。

 その昔、現在巨人を経てヤンキースで活躍する松井が星陵高校時代、四国の明徳義塾のなんとかという監督が、超高校級といわれた松井に徹底的に敬遠策をとり、全打席四球と勝負を避けて、世間の顰蹙(ひんしゅく)を買ったが、前述した勝ってなンボの職業監督にアタシャたまらない嫌悪感を覚えるんだ。

 さらにその昔のまた昔に、徳島の有数な進学校である池田高校の蔦監督が、プロ野球・東急セネタース?のピッチャーを引退し、その後教師の資格を取得して社会科の先生をするかたわら野球部の監督をして、弱小高校の池田高校を選抜高校野球に出場させたんだな。野球部員はたった11人で当時の新聞は「爽やかイレブン」と書き立てたっけなあ。イレブンなんて今日ビならサッカーの見出しだよ。アタシはこのニュースにも感動だったよ。

 エッ?それ何年前だって?。そんな古いこと覚えてますかいな。アンタ調べて?、オイオイ。

 これも古いことだが、過熱する甲子園に、高校野球は教育の、それも体育の一環として存在する、と警鐘を鳴らしたおヒトがいたけどホントだよなあ。

 さてさて、今日は野球教育論みてえな風呂屋のオヤジの顔とつながらねえ話になっちまったけどまあご勘弁を。そして、ついでにもう一つ。高校野球はいつでも爽やか、純粋であってほしいよなあ。風呂屋のオヤジはおよそ爽やかとは程遠いけどね−−。

2007年08月21日

競馬が中止だって

 開店早々に入ってきた中年の……と書いてちょいと思った。

 アタシャ簡単に「中年」と書いちゃうが、以前「中年って幾つぐらいなの?」と聞かれたことがあったな。そん時は「60代前半が壮年で、80代からご老体と申し上げている。それ以外はみんな中年」とアタシなりの勝手な解釈をしたが、今日の中年は壮年に近い60半ば過ぎのおヒトである。

 この中年氏が来るなり「競馬が中止になったんで週末は時間を持て余しちゃうよ」とのたまわれた。そう、この中年ウジ、名立たる?競馬マニアなんである。金曜日になると競馬新聞を持ってきて、湯上がりに予想・推理に余念がない。アタシャその姿を見て

 「どうせ外れるんだろうに、下手な考え休むににたり……」

 とヘソ曲がりに思ったりしたが、大きなお世話だよね。競馬に推理がなくっちゃあ予想にならないものね。しかし、今言ったように「下手な考え」を一切しないで新聞の予想を鵜呑みにして馬券を買い、ほどほど当てているヒトもいますが、しかし今日の競馬は3連単なんていう馬券もあって、プロの予想屋が20点近くあげても外れていますもんねえ。

 とまあ、大きなお世話が続いたところで、さて「競馬中止」のニュースに参ろう。スポーツ新聞にはは「馬インフルエンザで開催中止」の大見出しだ。

  「馬のインフルエンザによる開催中止は71年以来36年ぶり」

 とも報じていたねえ。競馬マニアが馬券を買えない心境は辛いんだよなあ。実は何を隠そう(ヘッ何を隠すんだよォ、気取ってらア)。アタシも経験があるんだ。36年前の開催中止の時に、今は競馬のケの字もやんないアタシだが、当時は明けても暮れても馬券馬券の時期があったんだ。木曜日に出馬表が発表されると新聞と首っ引きで、それこそ下手な考え……に没頭したんだ。

 馬券中毒とでもいった時代に馬の風邪による開催中止じゃない。中毒者が禁断症状を起こしたようなもんだ。当時の風邪は関東だけだった。名牝・トウメイや豪脚メジロムサシがいたように思ったなあ。そこで禁断症状の矛先は「関東が駄目なら関西があるわい」と、新聞に小さく出ていた関西の出馬表を眺めて、名前も知らねえのに「1−4、1−5、ン枚、百円券で……」などとノミ屋へ入れたんだ。

 ノミ屋ってね一杯飲み屋じゃないよ。いうなればモグリの馬券屋さんだ。当時はこんな行為も半ば平然と行われていたんだ。見つかれば罪になることは当り前だが、胴元はヤーさん関係だったらしいね。そして、今なら当り前のように飛び出す万馬券も、その頃は滅多に出ないんだが、万一出た場合は支払は1万円が限度だったな。

 しかしねえ、下手な考えも休まずにやっていてさえ当たらないのに、名前も知らない馬を当てずっぽうにやって当たるわけがないやね。ゼニをドブへ捨てるようなもんなんだけど、それでも中毒症状は委細構わず、セッセセッセとドブへゼニを捨てていたなあ。ギャンブルってそんな魔力があるんだよねえ。

 さて、先刻の馬券師さんが湯上がりで出てきた。

 「競馬は休みだし、後はパチンコしかないなあ。パチンコ屋でも寄っていくか。しかしパチンコ屋もこの頃は出さないんだよなあ」

 当たらない競馬にセッセと励み、出ないパチンコに通う……。そしてね当たらない出ないでいい加減イヤになってきた頃にド〜ンと当り、ドサッと出るんだよね。ギャンブルの神様?は意地悪の性分なんだねえ。

 そんなことだから馬券師さん、じゃない、パチンコもやるからギャンブラードノねえ、そろそろ大当たりの女神がやってくる頃じゃないかな。明日は吉報?を待ってますぜ−−。

 またショボクレタ顔でやってこないでよ−−。

2007年08月18日

感想文がきたよ

 最近見えるようになった20代の女性。

 スラッとした長身で、化粧っ気のない顔にメガネを掛けている。

 一見、女子大生といった感じである。湯上がりのロビーで、あるいはランドリーで当世の若者のようにケータイをいじり回してるでもなく、いつも本を広げている。本が好きそうだな、で、アタシャ浴場広報誌「1010」を簡単に説明しながら差し上げたんだ。

 その時

 「後で感想文を書いてきます」

 といって帰ったんだが、それから数日後「呼んでみてください」と渡された便箋風な、これなんというんだろ?花模様の入ったB5の半分程度の用紙である。そんな用紙に4枚、鉛筆で書かれてある。今日ビ大人が鉛筆書きというのもめずらしい。このおねえちゃん、じゃないおねえさんが普段、学生の延長で何かと書いていることがうかがわれるな。ということで全文を紹介しよう。

  「おつかれ様です(今日も暑かったですなぁ)。私は土日が休みの仕事ですがあれやこれやと手を出してるうちにもう日曜の夕方になってしまいました。文章、楽しく読ませていただきました。星野さん自体もはなしの中に存在するのに必ずしも自分は主役ではなく、お客さんを主役にもってきているところがすごく読みやすい理由であると思いました。

 私も大学生の時、たくさん論文を書きましたが、限られた時間の中でいかに納得のいく文章を書くかってことは常に私に付きまとっているテーマでした。

 話は変わりますが、最近英語の本を読んでいて「孤独」には二種類あるということを知りました。一つはロンソネツ(消極的孤独)で、もう一つはソリチュード(積極的孤独)です。前者は一人でいることをさみしいと感じるそうですが、後者は一人でいることをとても楽しめている気がするので、わたしが一人でいる時間はソリチュードと呼べるでしょう。

 私の好きな夏目漱石のある小説の中で「若い人は淋しいんですよ」というセリフが出てきますが、私はもう淋しくはないなあ。だからもう若くないのかも知れない(笑)。私は今二十五才で働いていますが、勉強したいことがまだたくさんあります。

 勉強は一人でしかできない勉強ってのも多いだろうからやはり一人の時間は大切なんです。といっても天来淋しがり屋ですから会社帰りの平日の夜はおフロに行くことによってもっている部分も大きいんです。ということで長くなりましたが、今後ともよろしくお願い致します。(氏名)」

 ウーン、消極的孤独に積極的孤独かあ。夏目漱石もでてきたなあ。これ、文学少女の一文だよね。アタシの「フロント日記」についても「ホシノさん自体もはなしの中に存在するのに必ずしも自分は主役ではなく、お客さんを主役にもってきているところがすごく読みやすい理由であると思いました。となっていたな。

 こんなことアタシャ、ン十年も書いているけど考えてみたこともなかったよ。いろんな見方があるんだねえ。さらに英語の本から引用したって言うロンソンじゃねえロン…ロンソネツか、それにアイムソリーじゃねえ、ソリチュードかあ。文学少女の文章はどうも気骨がおれるわい。

 消極的孤独ねえ。アタシに言わせりゃ孤独感なんてあまり関係ない。性格の問題でしかねえんだろうな、と思っちゃう。つまり内気で引き篭もりがちで、よく言われる「お宅」ってやつだ。パソコンお宅てな類ぐいだな。

 次いで積極的孤独かあ。物事に積極的な者には「孤独」の言葉はあてあまらないんじゃねえの。どっかの学者が無理して?孤独感を2分しちゃったようにアタシには思えるねえ。うちの客なんかでも独り住まいの若者が結構多いが,みんな好きなことを楽しんでいるようだしねえ。

 どうも今日は文学的女性の影響で、いつものアタシのブログと勝手が違っちゃって締めくくりの着地点がみつからねえよ。だからここで終了!

2007年08月17日

ブログ再開です

 ここんところちょいと「番台ブログ」を休んじゃったなあ。

 実はね、アタシ今度、草隆社から

 「風呂屋のオヤジの日々往来・世相あれこれ番台ブログ」

 っていう本を出してもらったんです。


 この本はアタシが昨年より1年間書いたブログを抜粋してまとめたものなんですが、一応、ひとつの区切りができたような気分でブログは小休止といったアンバイになっちゃったんですよ。

 しかし、お客さんの中には結構ブログを見てくれている人がいるんですよねえ。「最近、あんまりブログは書いてないんですか?」てな言葉を掛けられるんですな。

 「ええまあ…そのうちにまた書かせてもらう予定ではいるんですがね……」

 とアイマイなご返事をしていたんだが、今日、機は熟した−−(何の機だ、柿の木が熟したのかよォ。いえ桃の木……オイオイ)ということで、さあ、再開!、銭湯開始!ってところだな。

 さて、まずは久しぶりだから時候のご挨拶から参ろうか。暑中お見舞い申し上げます。と月並みな言葉を述べたはいいが、今年の夏はなんとまあ暑いことか。連日30度をラクに越して、32、33、34、35とドジョウ上り、じゃねえウナギ上りだ。どこまで行っちゃうのかねえ。 |

 お客さんが一様に「フーッ暑いッ」と入ってくる。中年の男性が「今日は35度だってよぉ。この分じゃあ37〜8度まで行きそうだな」。それを聞いたやはり中年ウジ

 「な〜に36度だ7度だっていったって体温じゃ平熱じゃねえか」

 オッホッ、平熱ときたな。なかなか言うねえ。しかし、そういうご本人、汗をだらだら流してますな。これじゃ平熱じゃねえな。

 今日の新聞は「酷暑」の大見出で「43地点 最高気温」となっている。時候の記事がトップニュースの扱いなんて過去にもそうねえことだろう。

 「気象庁によると、国内の史上最高気温は1933年に山形市で記録した40・6度で、40度以上は2004年以来3年ぶり。40・2度は過去で4度観測されている。また、北海道の苫小牧市や釧路地方で猛暑日を記録したのは初めて」

 と書かれている。これは高温に加えてフェーン現象にラニ…ラニニャオン…(猫じゃねえんだ)、舌噛みそうだよ。ウン、ラニーニャ現象だ。何のことだかさっぱりわからんがとにかくそんなもんがみ〜んな固まっちゃったってんだな。

そういえば「猛暑日」という表現は今年からできたんだってね。今までは真夏日だったらしいがもうそんな言い方じゃ生ぬるいんだな。そのうち「炎暑日・灼熱日」な〜んて言うのもできそうだな。

 そんなクソ暑いさなか、アタシの部屋のエアコンが故障しやがった。働かせ過ぎて疲れたんだろう。エアコン屋さんが「修理にうかがうのが来週になります」という。猛暑で多忙そのものなんだろうな。エッ?この暑いのにクーラーなしで大丈夫かだって?

 ボケが進まないか心配だって?。な〜に「心頭滅却すれば灯もまた涼し」くならあ、ケッ無理して、まあ−−。






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