奥さんのパチンコはねえ
個人タクシーの運転手さんが見える。
もう50代であろうが、いつも開店間もなくの人である。
「あたしは、あんまり昼間出ることは少ないんだ」
と言われるから個人タクシーは比較的自由なんですな。来るとやはり商売柄のせいか時候の挨拶が多いようだ。
「今日はこんなにいい天気だから夜も降らないでしょうね」
「降ったらやはりよくないんでしょ?」
「そうね、途中から降ってくる場合は結構乗ってくれる人がいるけど、降り放しじゃだめですね」
あまり饒舌な人じゃなく簡単な挨拶で入られるんだが、今日は珍しいは話しをなさった。
「オヤジさんはパチンコをやるの?」
「いやアタシはパチンコをやったことがないんだよね」
から始まり、こんなことを言われたんだ。
「仲間の話なんだけど、あたしらの仕事は出かけると一晩中帰ってこないでしょ。それで奥さんがパチンコにのめり込んでいたらしいんだね。おやじは奥さんがパチンコに凝っていたんなて全然知らなかったらしくて、ある日突然サラ金から大きな金額の請求が来てびっくりしたらしい。何でもとても払えるような金額じゃなかったらしいんだね。それで今、別れる、離婚するっていう問題になってるんだって」
ウーン、時折どこぞの奥さんがカラオケやパチンコに夢中だなんていう話は聞かないでもないが、こんなに家庭騒動になるような話は初めてである。そこでアタシャ当湯(うち)の常連さんで、いつも声高にパチンコ談義をしている40代の独身男性に聞いてみたんだ。先ほどのタクシー運転手さんの話を簡単に説明してね。
「今のパチンコ屋さんには奥さん方が多いの?」
「奥さん方?、多いなんてもんじゃないよ。朝っから一杯やってるよ。そしてね、今のパチンコは昔と違
ってハンパな金じゃないからね。2万3万じゃしょうがない、最低5万位は必要なんだ」
「ホウ、じゃ奥さん方も結構使うんだろうねえ」
「そっ、バンバン使ってるよ。カードだなんだかんだって、サラ金から借りてくるらしいんだよね」
ホホウ、先刻のタクシー運転手さんの話を裏付けることですな。
今、奥さん連中の間にパチンコブームが起きてんのかねえ。それにしても女湯からパチンコの話はついぞ聞こえてこない。男湯の脱衣場からは競馬・パチンコの会話がトップだが、公衆浴場の女湯ではやはり女性がパチンコをする話ははばかるんでしょうかねえ。
それにしても亭主に内緒で道楽にのめり込み、気が付いたら借金の請求書がワンサカきたら何も知らないご亭主はタマゲルよねえ。
毎日、一晩中働いているのに留守を預かる奥さんが亭主のいないことをこれ幸いと道楽三昧に耽っていたらご亭主はたまったもんじゃないですな。
そういえば先日の新聞に給食費・保育費の滞納問題が大きく出ていましたなあ。「奥さんの使い込み」との見出しもあったが、その滞納額が年間、相当な金額になるという。徴収員が集金にうかがっても何だかんだと理由をつけて払わないらしい。ご主人に話をするといえば、主人には黙っていてくれと懇願するという。記事には奥さんの使い込みの内容にまで触れていなかったが、これなんかもパチンコなどのギャンブルに夢中になって……というケースが多いんじゃねえかなあ。
記事には
「こんな親の姿は子供にも大きな影響をもたらすだろう」
とも書かれてあったが確かに子供の教育にはロクなことがないよねえ。
しかしパチンコにのめり込んじゃうと子供のことなんか考えないんだろうよ。先刻のパチンコマニアの男性がこうも言ってましたな。
「奥さんの中には小さな子供を連れてやってる人もいるんだから、どうしようもないよ」。
この男性は独身だから家庭の心配もなく心置きなくパチンコに専念できるんだろうが、フツーの奥さんはそうはいかねえもんなあーー。






