競馬場もねえ
「お花見に行ったの?」
「いや、花見は花見でも中山のほうへ花見に行っちゃった」
「そう。花見でゼニが儲かればこりゃあいいよねえ」
「ところが、中山競馬場の花見は儲かるどころか逆に金がなくなっちゃった」
毎日見えるサウナの常連さんである。もう60にはなったであろう。一見、真面目そうな感じに見えるんだがギャンブルがお好きのようなんですなあ。
いえね、ギャンブルが好きな人は不真面目だと言ってるんじゃないんです。ちょっと言葉が足りなかったな。アタシだって若い時はパチンコこそやらなかったものの、競馬にマージャン、ビリヤードからお酒もやってましたからねえ。
じゃ、不真面目そのものじゃないか?。いえいえ、遊びが好きでもそれに明け暮れしてたわけじゃないんですからね。仕事は一応キチンとやってたつもりですから。ツモリなんだろ?。やってた「つもり」っていうんだから、端から見たらおそらく不真面目そのものだったと思うがねえ。そうかなあ……。
ハテ?、アタシャ何を書くつもり(またツモリですな)だったんだろ?。そうだ競馬の話を少々しようと書き出したんだっけ。中山競馬場へ花見に行ってきたという御仁は言う
「今の競馬は昔と違って3連単だなんだかんだってギャンブル性が強いから金が掛かりますよねえ。当たれば配当が大きいからついつい何点も買ってしまうけど、外れたら目も当てられないですよ」
「そうだろうねえ。アタシは競馬をやらなくなってもう相当経つから今の馬券の仕組みはよく分からないけど。スポーツ新聞に『的中馬券の情報を無料提供します』って大きな広告が載っているねえ。あれどうなのかなあ」「競馬ってそんなに当たるもんじゃないですからねえ」
と、何やら悟ったようなセリフを残して脱衣場へ向かわれたが−−。
アタシャ朝起きるとまずは日刊紙とスポーツ紙に目を通すのが一日の始まりなんだが、ここんところスポーツ紙を開くとやけに派手な広告が目につく。多いときは2面も使って
「私たちと同じ 的中馬券を、あなたも今日から手にし てみませんか。私たちは毎週、豊かな週末を送っています」
てな大きな活字が目に入ってくる。そして
「毎週3レース以上の馬券的中・最低でも土日で20万円獲得」
の見出しが並び、的中番号がズラッと書いてある。さらに
「今なら情報無料提供」
だと。スゲエな。毎週20万だと年間52週として20×52=え〜と1千と40マンか。10年で1億……ホウツ、そうすっとこの予想屋さんたちは、いずれ長者番付に載るっていうことですなあ。
先刻の馬券師さん?が上がってきた。アタシャ新聞広告を見せて馬券術?をお聞きした。
「こんな記事を参考にすることがあんの?」
「あたしはないけど10点も15点も予想して外れだなんてことになったらねえ。あたしは基本的
に3点主義だけどね」
とそんなの絵に書いたモチだと一笑に付したよ。
「競馬は推理とスリルのゲームで、右のポケットに軍資金を入れて当りの配当が入ったらそれを左のポケットに入れ、左のポケットのお金を『儲け』と思わなくてはいけない」
と言ったのは競馬ファンで、ご自分でも馬を持っていたという文豪・吉川英治でしたっけなあ。
そういえば昔、美空ひばりが歌っていたねえ。♪右のポッケにゃ夢〜があるゥ左のポッケにゃゃゼニがあるゥ♪。モシモシ、ひばりのその歌は「東京キッド」だと思うけど、左のポッケにゃチューインガムですがな。
そしてさあ、馬券と美空ひばりはどう関係があんのよ。全然つながらんじゃねえか。ツマンネエ話の流れだ。そっか申し訳ない−−。
さて今週はクラシックの第一弾「桜花賞」だ。絢爛たる桜の下を疾走する4才牝馬に馬券師さんねえ、大枚を投じて左のポッケを配当で膨らませてよ。けどねえ、桜もそろそろ散り頃だし「サクラチル」な〜んてオケラ街道トボトボにならないようにしてよね。
できれば桜花賞のかくかくたる戦果を報告してよ。予想屋さんの向こうを張って
「俺だって豊かな週末よ」
ってね−−。






