風呂屋のオヤジの番台ブログ

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外人が銭湯賛歌をねえ

 夕方のフロント。アタシが当湯 (うち) のインテリさんと位置付けている78才だというダンナがゆったりとお見えになった。

 以前、このブログにも登場してもらったことがあるんだけど、その時、ご自分でお書きになったエッセイを拝見したんだが、達筆で洒脱な文章なんですよねえ。W大卒業後、会社勤めが定年になり現在は悠悠自適のご身分のようだ。

 そう古いお客さんではないが、アタシの本を読んでくれてから何かとお話をするようになった。下町の銭湯といえば庶民的でがらっぱちなおじちゃん。おばちゃんが多く、まあ、あまり知的じゃない雰囲気なんだが、この方はそんな下町的なものと違い、会話にインテリ性を感じさせられる人でありアタシにとっては異質のお客さん、と言ってもいいかな。

 何しろフロントでアタシに

 「中世のヨーロッパでは入浴行為、つまり体を洗うことが不浄になるというんで、神父さんなんかめったに体を洗わなかったらしいねえ」

 などという話をされる御仁なんだからねえ。アタシャ、江戸時代の銭湯模様程度なら少しは心得ているつもりだが、中世の入浴行為は……などの話が出てきたんじゃあもうイケマセンや。静かに拝聴してるだけですな。アタシにとってちょいと参考にもなる方でもありますね。

 今日は一枚のコピーをお持ちになった。
 「イギリスの記者が書いた銭湯についての話なんだが参考になると思ったのでコピーしてきたのよ。読んでみて」

 で、さっそく拝見したんだがホント勉強になったねえ。

 「ニッポン社会入門・英国人記者の抱腹レポ−ト、コリン・ジョイス」

という表紙がついていて、この道五十年、風呂屋のプロと威張っている?アタシが読んでも大いに参考になったねえ。

 どうも前置きが長くなっちまったので、肝腎の本文が抜粋程度になっちゃうけどまあご寛容願おう。

−−日本人が発明したものの中で、ぼくのいちばんのお気に入りは銭湯だ。ほとんど完璧だとさえ言ってよいほどの発明品だと思う。東京だけでも何百もの個所で身体を清潔に保つこととリラックスすることを可能にしてくれている。

 夏の夕方、遊びに出かける前に日中の汗を流しておけるのはとても好都合だ。冬は冬で、身体が温まる……。しかし、ロンドンには銭湯がない。これから銭湯を建てるにはもう遅すぎるだろう。経済的に収支が合わないだろうし、それに何よりもまず、越えねばならない文化的障壁が高すぎる。

 なので、ぼくは銭湯を日本の暮らし特有の恩恵と考えているのだが、不思議なことに日本人はそう思っていないようだ。日本の若者の多くが銭湯に行ったことがないのは驚きだ……。

 二千円もする温泉は人でいっぱいなのに四百三十円の銭湯を利用しているのはお年寄りだけだ……。ハーブ風呂、サウナ、泡とジェットのマッサージ風呂などを備えた銭湯の多くは、質の面では決して温泉に見劣りしないのに。

 銭湯を「ポータブル風呂」、ウォ−クマンの風呂版として宣伝してみてはどうだろう。街のどこにいようと好きなときに入浴を楽しめるというわけだ。あるいはバーになぞらえるべきかもしれない。家の風呂に入るのと違って、第一級の設備を楽しむことができ、他の人と気軽に話をすることもできるという点を強調するのだ……。

 ともかく、イギリスから友人がやって来ると、彼等はわざわざ銭湯へ行くことを勧める必要さえないのである。友人たちはあらかじめガイドブックを読んで銭湯に興味を持っており、一度行くとすぐに銭湯ファンになる。銭湯はほんとうに素晴らしい思いつきだ−−。

 途中一部を省略したが、いかがです?。「ポータブル風呂」ウォークマンの風呂版として宣伝してみては……なんて面白い発想じゃない。外国人がこのように銭湯賛歌を書いてくれているんだから、400余年の伝統を持つわが湯屋モン、頑張んなきゃいけませんなあ−−。






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