風呂屋のオヤジの番台ブログ

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銭湯の会話はねえ

 銭湯から会話が少なくなっていくなあ……とよく書かせてもらうが、この傾向は銭湯に限らず世間一般がそんな風潮になっているんじゃないだろうか。これには様々な要因があるんだろうが、何にしても会話が少なくなるということは人間関係を希薄にしていくし寂しいことである。

 毎日のフロント稼業で当方の「いらっしゃい、寒くなりましたね」といった言葉にも終始無言の人が結構いるんだ。「簡単な挨拶ぐらいしてほしいなあ」とよく思う。こんな状態は若い人の特徴かと思うがそうじゃない。

 高齢者にも増えているんである。

 とまあ書き出したが、銭湯の多様なお客さんの中にはそんな無口な方とは対照的に饒舌な人もいるんだ。今日はそんな人をお二人取り上げてみることにした。登場するのは常連さんと新しいお客さんである。

 まずは60半ばの男性。毎日の常連さんである。いつも大きな声でテレビの話しから仕事のこと、世間話などなどを喋っているんだな。脱衣場は銭湯のくつろぎの場所でもあるから、楽しく存分に話を弾ませてもらいたいよね。

 さて、そんな「話好きウジ」が湯上がりでフロントへ出てきた。そしてアタシと帰り際にいつもの雑談である。と、そこへ50代の奥さんがお見えになった。入浴料を払われる姿にくだんの「話好きウジ」が声を掛ける。この方ね、初対面の女の人でもスラスラッと声を掛ける。むしろ女性のほうが話しやすいようでもある。リップサービスに長けてんですかねえ。

「今、空いているからゆっくり入ってね。なんなら背中を流しますからね」。

 言われた奥さん「アラッ、ウッフッフツ……」。

 一時が万事こんな調子である。そしていう「風呂上がりにさあ、バカバカしい冗談を言ってると何か風呂に入ったという感じがするんだよねえ」と。

 さあ、次に参ろうか。今度は50前後の男性で一見(いちげん)さんのようだが、それにしてもよく喋られるおヒトなんだ。入ってくるなりカウンターの料金表を指差しながら「大人1枚!」とのたまわれた。50男が「大人です」というんだ。どう見ても中学生や子供には見えない。面白い人だよ。アタシャ思わずニヤッとしたが大人ウジは気が付かない。。そして続ける。

「ボクを覚えてますかあ?」

「さあ……前に見えたことがあったかな」

「7、8年前、Y町にいて時々入りにきていたんですよ」

「そうでしたかあ」

「当時とお店はあまり変わっていませんねえ」

 モシモシ、当湯(うち)は3年前に改装したんで程々変わっているハズなんですがねえ。「サウナもまだ200円なんですね。これも変わっていませんねえ。200円じゃ合わないでしょう」

 200円では安いですかあ、じゃ入りますか?、入らない?。聞いてみただけだって?……。そして「オヤジさんの眼鏡も昔と変わっていませんねえ」ときたぜ。フツー、久しぶりに見えた方は「元気ですか。お変りなさそうで」とかなんとか言われるのが社交辞令の一つでもあるんだが、メガネが変わっていませんねえとはまた珍しいご挨拶だよ。このヒト、何事も変わらないことがお好きなんですかねえ。アタシャ、メガネの返事に代えて「ジジイになっちゃったけどねえ」と申し上げた。お客さん、改めてアタシの顔を眺め直しうなずくような表情を見せた「そうですねえ、年を取りましたねえ」という顔付だよ。

 お客さんさあ、お客さんは変わらないことがお好きじゃなかったのかな。もしそうだったら「いや、昔と変わっていませんよ」とお世辞の一つも言ってくれると思ったのにねえ。このヒト、ヘンなところに正直なんですなあ。さらに昔のことなど次々と喋られる。お客さんさあ、お話も結構なんだけど、風呂に入る時間が無くなっちゃいまっせ……。

 というようなことなんである。とにかく話には様々な面白さがある。どんな会話でもいい、喋ることから親しみも湧くんですよねえ。ムスッとしていたんではな〜んにも生まれてこないと思うけどねえ−−。






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