風呂屋のオヤジの番台ブログ

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整形外科で

 寄る年波には勝てませんなあ。ここんところ足が冷えてしょうがない。大したことはねえだろうと有り合わせの膏薬などでごまかしていたんだが冷えは一向に消えない。いやむしろつのるばかりだ。足先がシビレル感じもするんだよね。で、しょうがない、億劫だったけど近所の整形外科病院へ出かけたんだ。

 病院では、レントゲンを撮り、治療は電気と温熱療法である。

 しかし病院って相変わらずお年寄りが氾濫しているねえ。エッ、お前さんだってジジイじゃねえかですって?、ごもっとも−−。ま、年を取りゃあ誰だってどっかが悪くなりますもんねえ。

 日本は世界有数の長寿大国だそうな。医学の進歩は人間の寿命を無制限に延ばしてくれているが、しかしねえ、元気で長生きは誰でも願うことだが、反面お医者さんと薬でなんとか生かされてるようなのも侘びしいねえ。

 とまあ、冴えない書き出しになっちゃったが、まずは電気治療だ。広い治療室で5、6人が椅子に座って治療を受ける。看護婦さんがてきぱきと対応してくれる。電気のコードを患部に当てがい弱電流を軽く流してもらう。患者さんは神妙に黙々と治療を受けている。治療室に静寂が漂っている。こんな時、みなさんは何を考えているんだろ?。無の世界ってやつですかな。

 そこへ次の患者さんがやってきた。70半ばのおばちゃんである。常連さんだと見え、アタシの隣にいたやはり同年輩のおばちゃんとお喋りが始まった。

 静かだった治療室がなんとなく賑やかな雰囲気になったアンバイだ。

「あら、しばらくねえ。元気だったの?」

 アタシャ聞くともなく聞いていて思ったよ。元気なら病院へ来ますかいな。

「元気ないのよォ。目の手術をしてさあ。その手術でする注射がとっても痛いのよねえ。それでね、しばらくお風呂もだめ、顔も拭く程度にしなさいって言われたの。だから髪を洗う時はパーマ屋さんにやってもらうの。一回千円」

「そう、それで直ったの?」

「それがどうもよくないのよね」

「だったらちょっと入院しちゃったら」

 ホウ、ちょっと入院……ですかあ。気楽におっしゃいますなあ。何やら別荘にでも行くような調子ですな。

 アタシャ考えることがないからおばちゃんたちの会話を漫然と聞いていた。

 今度は80近いであろうおじちゃんが見えた。この方も先刻のおばちゃんと顔見知りらしく、気さくに声をかけてきた。

「よお、しばらくだね。なんか顔色がよくないんじゃないの」

「そうお、目の手術をしてさあ、そして今日はお化粧をしてないからね。あたしはブスだから化粧しないとだめなのよ」

「いやブスじゃないよ、ブスじゃないけどさあ……」

 おじちゃん、次の言葉を飲み込んだ様子だ。何やら奥歯に物がはさまった感じの言い回しだよ。アタシャ、腹ん中で笑っちゃったよ。おじちゃんは正直なんだ。だからブスをフォローする言葉が言えなくて次がでてこなかったんだ。

 さて、アタシの電気治療の時間が終わったな、次は温熱療法だ。それにしてもおじちゃん、おばちゃんたちの会話はおもしろいねえ。何やら談話室っていう味わいだ。病院ではなく高齢者のサロン、社交場ってな趣もあるよ。そのうち「看護婦さん、お茶頂戴!」なんて言いかねないな。

 そういやあ、この広い治療室で、調子が悪そうな生気のない顔をしてるのはアタシぐらいなもんだねえ。おじちゃん、おばちゃんにあやかってもっと元気を出さなきゃいかんですな。病は気からっていうもんね−−。






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