ダービー
前夜来の雨はあがったものの、やや重の東京競馬場の2400m。荒れそうだな。ダービーは競馬界最大の祭典だけに独特の雰囲気がある。脱衣場でもほどほどの盛り上がりである。開店早々に見えた中年の男性。ご多分にもれず競馬マニアである。
「今日はどっからいったの?」「ウン、今年のG1は1枠がほとんど絡んでいるからおとなしくメイショウサムソンから入ったよ」。ホウ、一番人気ですな。
そしてファンファーレ。脱衣場では4、5人のお客さんが気合を入れて見ている。レースは人気薄のアドマイヤメインがハナを切り直線坂上まで粘りに粘った。3・4番手で追走の本命・サムソンがゴール100m手前で交わし首差でゴール。3着は四番人気のドリームパスポートが追い込んだ。馬連は 2−6 で1120円、馬単も 2−6の2110円である。例によって結果をフロントの掲示板に書き込んだ。
さて、先刻の当湯の馬券師?があがってきた。掲示板を眺めてうなずいている。
「今日はウマクいったね?」「うんまあまあだったよ。馬単とったからね」
「で、1万もぶちこんだの?」
「まさか、千円とっただけさ」
「ホウ、それでも二万一千円じゃない。スゴイね」
「ウン、しかしなあ中央競馬界には随分貸しがあるからなあ……」。
この方、いつも脱衣場で競馬を楽しんでいかれるんだが、毎度「ダーメッ」と自嘲的に吐き捨てるような口調だった。しかし今日はゴキゲンである。競馬ってやつは当らなくていい加減イヤになってきた時にポコッと当るんである。そこでまたまたのめり込むという寸法なんだ。ギャンブルの特性?じゃないかな。
お次ぎである。夕方に見えたのは中年の職人さん。こちらも大の競馬ファン。今日はスポーツ新聞を手にお見えになった。フロントの掲示板を確認してからアタシに話しかけてくるのがいつものパターン。
「メイショウサムソン、強かったね」
「そうね、皐月賞馬だから素直にサムソンから入ったんだけど、3連単で 15番をみなかったからなあ。だけどさ、この新聞見て?、評論家が3連単の予想で13本もあげておいて 15番なんか一つもみてないんだからねえ。当る当らないはともかく、プロの評論家っていうやつが13通りも予想して15をどっこにも書いてないんだから、こりゃあプロ失格だよね」
「そっ、オレもそう思うね。プロの予想屋なんていうもんは、ある意味じゃファンのお金を預かっているようなもんだから、まるっきりの的外れな予想をしたときは本来ならそれなりの責任をとらなきゃいけないようなキビシサが必要だと思うよ」
「ほんと、万券のナントカ−−なんて何回か一回当るとそん時だけ大きな活字で宣伝して、後は当たんなくても知らん顔だもんなあ。いい加減なもんさ」
G1レースの日は競馬談義が脱衣場の話題の中心になりますな。楽しいもんです。






